ウィキの「ジャニー喜多川・所属タレント『セクハラ』裁判」一部記述削除を批判する
インターネットの百科事典だそうだ。しかし、実際には誰でも書き込める掲示板のようなものとかわらず、その確度は怪しい。もちろん、全てがダメというのではなく、真面目に書かれたものもたくさんある。だからこそ、個人的な感情で書き加えたり削ったりするのは残念なことである。
そのウィキで、ジャニーズ事務所のオーナーである「ジャニー喜多川」を検索すると、今まで書かれていた所属タレントの「セクハラ」に関する記述が、最近になって削除されたり一部戻されたりしていることに気付く。
理由をみると、記述の一部が、その問題に言及した書籍を多数出している出版社である「鹿砦社の言い分だから」ということになっている。本当にそうなのか、真実を判断していただくために、削除された部分と復活した部分とを列挙しておく。
今も削除されたままなのは、1967年11月の「引き抜き裁判」における「ホモセクハラの暴露」である。ジャニーズ事務所が初めてマネジメントしたジャニーズの4人組とジャニー喜多川が、それまでレッスンを行っていた新芸能学院を離れてジャニーズ事務所でデビューするにあたり、彼らの授業料やスタジオ使用料、宿泊費、食費など270万円が未払いであるとして、学院の代表者がジャニー喜多川を訴えた。
その際、代表者はジャニー喜多川による「ホモセクハラ行為による引き抜き」であることを法廷で明らかにし、あおい輝彦、真家ひろみらジャニーズの4人も出廷した。当時、『女性自身』(67年9月25日号)が「ジャニーズを巡る"同性愛"裁判」というタイトルで彼らの証言を記事にしている。ジャニーズのメンバーはこの裁判では否定したが、後に中谷良が「裁判の証言は嘘だった」と自著で告白している。
次に、削除されたが復活した記述は以下の3件である。
『週刊文春』が1999年に開始した同事務所の「未成年に対するセクハラ行為(性的行為の強要)・薄給」批判キャンペーンに対し、同事務所が民事訴訟を起こした件で、「ニューヨークタイムズ」(2000年1月30日付の国際面)や、イギリスの「オブザーバー」(英Guardian紙日曜版、2000年4月23日付)など、外国のメディアが取り上げたこと。
また、同年4月13日、第一四七国会「青少年問題に関する特別委員会」で、当時自民党衆議院議員だった阪上善秀理事(現宝塚市長)が、ジャニー喜多川の件を含めて、ジャニーズ事務所についていくつかの質問を行ったこと。
さらに、最高裁が同事務所の所属タレントへの性的行為強要と薄給を認定したにもかかわらず、芸能マスコミは判決の賠償額が一審の880万円から120万円に減額された事実だけをベタ記事で書いて済ませ、「所属タレントへの行為が認められたから減額された」という理由を書かなかったことを批判した記事が、ジャパン・スケプティクスという超常現象に対して実証的な研究と反論を行なっている学者やジャーナリストが作った団体の機関誌に掲載されたこと。
ただし、いずれも「セクハラ」という言葉は「同性愛」に直されている。
裁判も、それに関する報道があったことも客観的事実であり、誰それの意見や解釈というものではない。鹿砦社がでっち上げたわけでもない。したがって、「鹿砦社の言い分だから」削除するというのはおかしい。
また、たんなる「同性愛」なら裁判になるはずがない。裁判で問題になったのは、未成年に対する性的行為の強要についてである。「同性愛」という表現への改ざんは、同性愛者や、裁判や、裁判に出てきた少年たちの人権を愚弄し、ジャニー喜多川およびジャニーズ事務所に対する判決を免罪するものである。
たとえば、一般紙である朝日新聞も、判決を「所属タレントへのセクハラに関する記事の重要部分を真実と認め」と報道している(2004年2月25日付)。
これでもウィキの削除者は、「セクハラ」という表現が「鹿砦社の言い分」と言い張るつもりなのか。
業界関係者か、目を曇らせまくったファンか知らないが、最高裁までいって確定した判決と向き合えない手合いがいるというのは残念なことと言わざるを得ない。
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